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前回のコラムでは、
新型コロナウイルスで話題となっているPCR検査の
仕組みなどの概要について紹介しました。今回はPCR検査を実施するうえでの注意点について触れていきます。
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検査する対象物、材料のことを、検体といいます。
誰を検査するのはもちろん、何を検査するかの選択は重要です。前回のコラムで少し触れましたが、咳症状がある犬を検査するとき、
糞便を採取して呼吸器症状を起こす病原体について検査をしても、下痢の原因を特定することは困難です。
病原体は基本的に症状を起こしている部位で増殖しており、
病原体が少ないとPCR検査の感度が落ちてしまうためです。
検体の選択
新型コロナウイルスと検体
新型コロナウイルスのPCR検査では、どのような検体を使っているのでしょうか。
新型コロナウイルスの主な症状は、咳などの呼吸器症状と発熱です。
そのため、検体としては呼吸器関連物質が優先されます。
具体的には、鼻から肺にかけて、外に近い方を上気道、より体内の奥を下気道と分類し、下気道由来である痰や気管内吸引液が最も優先され、
次いで上気道由来である鼻咽頭ぬぐい液が優先検体とされています。
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痰とは、咳き込んだときに出てくる
やや固く粘稠度の高い透明〜黄色の粘液です。
これは喉から出てくるように感じますが、
実際は呼吸器の肺〜気管から出ています。
痰はそもそも呼吸器内の異物を絡め取って外に出されたものです。
痰(たん)
ウイルス感染がある場合は、免疫によって痰とともにウイルスを体の外へ排出しようとするため、
痰の内部には高濃度のウイルスがいると予測でき、よい検体材料となります。
しかし、同時に感染源にもなるということで、注意が必要です。
痰は汚いという印象がありますが、実際に病原体が含まれている可能性があるのです。
このことを踏まえ、軽犯罪法により道路などの公共の場で痰を吐き捨てた者は処罰の対象となっています。
公共の場で故意に痰を吐き捨てないよう注意しましょう。
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その名の通り、気管の内部から吸引された液体です。
気管内にカテーテルを挿入し、気管分岐部手前の分泌液を吸入するようにします。
気管内にカテーテルを挿入する手技は、患者にストレスを与えるため、難しい場合には除痛や鎮静が検討されます。
基本的には気管チューブという管が気管内に挿管されている状態の患者に対して行われます。吐き出された痰よりも純度が高く、より精密な検査結果を得ることができます。
気管内吸引液
鼻咽頭ぬぐい液
鼻の奥に細い綿棒を差し込み、鼻腔と喉の間である鼻咽頭の粘膜から検体を採取します。
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肺炎の病原を探す目的の検体としては、肺からやや離れるため、痰などと比べると検出率がやや落ちる可能性があります。
インフルエンザの検査でもしばしば用いられる検体で、インフルエンザが流行する時期になると 鼻に綿棒を挿し込まれて泣いている子供の様子がしばしば報道されます。
糞便
頻度は低いですが、新型コロナウイルスの症状で下痢や嘔吐などの消化器症状があることもあるという報告があります。
この場合、消化器でウイルスが増殖していることが考えられるため、糞便も検体として用いることが勧められます。 新型コロナウイルスと近いウイルスが原因と考えられている感染症SARSでは、7割ちかい患者が水様性下痢などの消化器症状を起こすと報告されており、新型コロナウイルスも今後の経過に注意が必要です。
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矛盾するようですが、例外もあります。
感染症によっては、症状が出やすい部位ではない、ほかの部位にウイルスが潜伏、増殖していることがあります。特に症状がまだ出ていないもしくは弱い場合には、鼻咽頭拭い液などの優先される検体を検査してもウイルスを検出できないおそれがあります。
ウイルスの潜伏
つまり、検査でいくら陰性だからといって、全身が陰性であるとは限らないということです。
新型コロナウイルスの体内での動きはまだ分かっていないことが多いため、今後検体の選択方法が変わってくる可能性があります。
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検体を採取した後は、検査方法の精度によって診断率が決まります。
検査方法の精度は技術的な問題であるため、簡単に改善することはできません。そこで重要となってくるのが、医師の診察と判断です。
その患者の既往歴、症状、経過などから、検査が必要かどうかを判断します。
診断率を上げる方法
そもそもその感染症の疑いが弱い患者に対しては、仮に検査をして陽性であったとしても、医師は検査結果を鵜呑みにはせず、ほんとに陽性なのかどうか再検討します。
このように、あらゆる面から診察、検査、検討し、総合的に診断を下すことが、診断率を上げるうえでとても重要です。
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われわれ一人ひとりが勉強し、得た知識を生かして行動することはとても大切です。
しかし、昨今のトイレットペーパー買い占め行動など、知識があいまいであるのに、感情的に行動してしまう人が目立ちます。新型コロナウイルスの検査についても同様です。
必要なときに、必要な人に対し、適切な検体を用いて検査をすることが重要です。
やみくもな検査をすれば、誤判定、誤診された患者が急増します。
自己判断ではなく、医師の判断を
誤診された患者は医療機関の負担を大きくし、地域の感染症に対抗する力を弱めてしまいます。 情報があふれる現代社会であるからこそ、 あいまいな情報に振り回されず、冷静な判断ができるように心がけましょう。